レビュー『ランチのアッコちゃん』 柚木麻子
読んだ本をゆる~く紹介していきたいなぁと思っているのですが、この本はそんなブログにピッタリではないかと(笑)。
「ランチのアッコちゃん」(柚木麻子)という本のタイトルになんとなく惹かれて手に取った一冊です。
仕事を持っている人が、ちょっと疲れたなぁというときの気分転換に読むといいなぁと思ったので紹介します。
「ランチのアッコちゃん」は短編ストーリーが4話。
それぞれ読み切りですが、1話と2話で登場人物に繋がりはあります。3話、4話はそれぞれ異なったお話ですが、ちらりと「アッコちゃん」の姿を見ることもできるという仕掛けです。
1話は、小さな出版社で派遣社員として働く「三智子」が、営業部長「アッコ女史」の提案で一週間「ランチ」を取り替えるという話。
この会社のある界隈にはランチメニューを出す店がないからと、三智子が毎日持参するお弁当を、アッコ女史の「ランチ」とを交換。会社の中では目にすることのなかったアッコ女史の違う一面を知ったり、今まで気付かなかった街の風景や人に出会うという話。
「そんなこと、ないってば~」と言ってしまえば、それで終わり(笑)。
例えそうだとしても、「もしかしたら自分もまだ知らないものや出会っていない景色があるのかもしれないなぁ」と思えてワクワクできる軽やかさがあります。
2話は、ワゴン車で移動販売をしているアッコ女史を「三智子」が一週間手伝うことになる話。
1話とは違う大手商社で派遣社員として働く「三智子」は、正社員との間で「バレンタインにチョコを渡すか渡さないか」で板ばさみになって悩んでいるところから始まります。
偶然再会したアッコ女史の勢いに吸い込まれるように、移動販売を夢中で手伝う三智子。
「チョコを渡すか渡さないか」という悩みを、直接解決するような出来事があるわけでもなく、読み進めていると、そもそもそういう悩みがあったのだということすら、頭から抜けてしまうように物語が進んでいきます。
最後には、「なるほど、そうきたか~」と思える展開。
どのように三智子が「バレンタイン問題」を解決したのかという方法よりも、「大丈夫。なるようになるって」と背中を押されたような読後感がありました。
3話は、少し昔を思い出して鼻の奥がツーンとなるような感覚。
偶然、高校時代に追いかけられては怒られてばかりだった教師と再会する野百合。相変わらず素行の悪い生徒を追いかけている途中だというその教師と二人で、夜の街を走り回る話。
聞こえのいい決め付けたような口調にいら立ちながらも、馬鹿にされるんじゃないかと思うようなことをすんなり受け入れてくれる教師に、高校時代を振り返りながら自分の心を整理していく場面が印象に残りました。
4話は、痛快なストーリー。
いやいや、そんなにうまくいく話ってないよ~と、そう思ったらそれまで。
もし、そう思ってしまうとしたら、心が疲れているのかもしれません(笑)。
あまりの出来の悪さに、入社後3ヶ月で辞めてしまった社員・玲実が、その会社の入るビル屋上でビアガーデンを始めるという話。
「業績があがらないのは、こういう理由なんじゃないですか~」とばっさり言ってしまうあたり、感覚的でとても心地いい。
しがらみがなく、自分が「こうだ」と思うことを行動に移せる身軽さは、例え物語の中のことであっても、羨ましいほど気持ちいいのです。
どのお話も、「いやいや、そんなにうまい話って・・・」と思えなくもない・・・。
もうちょっと説得力がほしいような気がしないでもない・・・。
でも、情景がすっと浮かんでくる楽しさがあって、読みやすかったです。
2時間ぐらいあれば、すぐ読めるんじゃないかな。
紙は、結構厚めのものを使っているようで、ページをめくるときに、まとめて2ページめくってるんじゃない?と何度もゴシゴシとすり合わせてしまうほどでした。
読書は苦手・・・という方にもいいかもしれませんね。
最初にも書きましたが、
仕事で疲れた時、人との関係でちょっと凹んでいるときにオススメの一冊。
この本の軽快さを楽しめるようなら、たぶんココロはまだ元気だと思いますよ♪
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