2018-06-11

レビュー『愚行録』-語るってちょっとコワいことかもしれない

本屋さんをうろうろしていて手に取った「愚行録」という本。
ちょうど映画化されたあと(記事を書いているのは2018年ですが、読んだのは2017年です)だったので、映画出演している俳優さんがデザインされたカバーがかかっていたことで、ちょっと気になりました。
妻夫木聡さんと満島ひかりさんが好きなので。

愚行録DSC04584

物語は、ある事件についてライターが事件被害者を知る人たちを訪ねて話を聞きながら、進んでいきます。ところどころで、「妹」が「兄」に語りかける場面が挟まれながら。

知人たちの話から、事件の輪郭や被害者たちの様子がじりじりと伝わってきます。被害者についての話から、話をする本人たちの様子が浮かび上がってくるのが興味深くて、どんどん読んでしまいました。
読み進めるうちに大きくなってきたのが、被害者に対しての「あー、いるわ、こういう人」という感情と、「正義」のようなものを見せながら、ばっさばっさと被害者をジャッジしていくちょっとイヤな感じ。誰にも「愚行」な部分があるのかもしれません。

誰かについて語りながら自分のことを語ってる様子に「いるわー、こういう人」という嫌悪感を持ちながらも、自分の中にも、そんなイヤな部分があるなぁなんてよぎるんですよね、コワいコワい。

そう、コワいんです。
結局、誰かや何かを語るときって、そのひとのこれまでの背景を通して見たことが、言葉になってしまうのかなと思ったのです。
あるひとつの「姿」も、見る人語る人によって、受け取り方が変わるんですね。

だから、この本もそうですが、なにかの感想を書くことって、自分を作ってる背景が伝わるのかもしれません。そう想像して、特にこの本はどこをどう書こうか、迷ってしまいました。

私は話を聞くことを仕事にしていますが「背景」に焦点をあてることで、目の前にある現実がよりはっきりと見えてくることがあります。
…なんというか…、語るってちょっとドキドキすることかもと思いました。

最後の最後は「うわ、そういうことかー」と何とも言えない後味の悪さがあるんですが、夢中で読みました。
最後の「妹」の告白は身につまされます。いろんなことが、背景と環境の組み合わせによる紙一重なのかと、ずどーんと来る話でした。

この小説。
ぜったい映画でも観たい!と思っていたのですが、一人の俳優さんの不祥事で打ち切りになっちゃったんですよね。それだけが残念でした。

今だけ企画

ただいま準備中です。

できるだけいろんな方のお役に立てる企画をと考えています。

関連記事