「その人らしい生活のために」-看護師という仕事 vol.4
看護師として、癌に特化した専門病院で働く小夜さん。
「病気の症状だけを見るのではなく、看護師はその患者さんの背景を知る努力をすることが大切」と話す彼女も、ご自身の母親がその病に倒れた時には、冷静ではいられない自分と対峙する困難があったと振り返ります。
母親の介護を通して、患者の家族として見えてきたものがあると話してくれました。
介護と自身の闘病を経験したことの意味
小夜さんは、母親の介護を通して教えられたことがあると言います。
それは患者だけでなく、患者を取りかこむ家族へのケアの大切さです。
仕事と介護の両立で、気持ちが張り詰めていたときに『葉っぱのフレディ』という絵本を贈ってくれた知り合いの気遣いによって、小夜さんは現実を受け入れることができました。
このことは、患者だけでなく、その周りにいる家族も、それぞれに不安や思いを抱えていることに、改めて気付いたのです。
病気の治療と向き合う患者だけでなく、それを支えようとする家族へも思いを馳せるようになりました。
「私、母親を在宅で看てたでしょ。たまたま私が看護師だったってこともあるんだろうけど、それにしても今の時代、これほど家で看取ることが特別になっていったのって、不思議だなぁって。
もちろん、家族の事情もあるし、介護力のこともあるけれど、昔はみんな、家で自然と亡くなっていくことを家族で見守ってたよね。
医療が進んで、病院で亡くなることが増えてますけど、患者さんはそれぞれ色んな歴史を持っているし、家族もその人に対しての色んな思いがありますよね。
『あぁ、あのときのこと謝ってないな』とか。
残された身内の方との時間、一日一日が大事にできるような関わりのサポートができて、最後に、あぁ、これでよかったんだって患者さんやご家族が思えたらいいなぁって思います」
実は小夜さん自身も、母の介護から数年経った頃、自身にがんが見つかりました。
手術と治療を経験し、今は元気に現場復帰しています。
その経験も、患者さんへの対応に変化を与えたのでしょうか。
その質問に小夜さんは「それは変わらない」と言い切ります。
「みんな、言うんですよ。手術も治療もして『つらいことも乗り越えてきてるから、同じ病気の患者さんへも経験を活かせますよね』って。いやいや、それは違うって思うんです。病気に対しての気持ちって、人それぞれで比べられるもんじゃない。人の気持ちなんて、私にはやっぱりわからないですよ」と小夜さん。
それに・・・と、続けて、
「よく『人生に起こることには意味がある』っていうけど、私には、自分が病気になった意味はまだわからない。だから、手術や治療を乗り越えた経験を活かせるっていうのは、どうしても違う気がするんです」と話します。
母の介護も自身の闘病も、あくまでも小夜さん自身の経験であって、自分の経験だけで患者の気持ちがわかるものではないという小夜さんに、謙虚さを感じる言葉でした。同時に、闘病も介護も「つらいことを乗り越えた経験が仕事に活かせる」と安易にはまとめられない辛さがあったのかもしれないと想像させられる言葉でした。
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