2017-06-16

『ツバキ文具店』-言葉には、伝える人と受け取る人がいる

いい本だなぁという温かい気持ちになりながら、自分のことを振り返る時間ももらえた一冊です。

ツバキ文具店kk本

「ツバキ文具店」という本。
テレビで、この本のドラマが放映されると知ったのと、新聞で紹介されていたことがきっかけで読んでみたいなぁと思って手にとりました。

鎌倉にあるツバキ文具店の2代目店主・鳩子が主人公。古い文具屋さんで、鳩子はいろんな人から「手紙の代筆」を請け負っています。

お悔み状、離婚の報告、絶縁状、天国の夫から妻への手紙。誕生日祝いに一言メッセージの依頼もあれば、「元気に暮らしています」と普通の手紙の依頼もあります。
当たり前といえば当たり前ですが、突拍子もない手紙にも、普通の手紙にも、贈る側と受け取る側それぞれに背景がある。「ツバキ文具店」の本の中には、それが描かれているので、鳩子が書き上げた文章を読みながら、鳩子と一緒にホッとしたり達成感を味わうような感覚になりました。

私自身、今でこそ、フライヤーやWEB用に文章を書く仕事をしていますが、2010年に一人で仕事をしようと立った最初は、「伝えたい気持ちをヒアリングしてメッセージを作ること」を仕事にしていました。(その文章を小さな本にするまでをしていました)

メッセージを贈りたい側・気持ちを伝えたい側の思いは、依頼を受けるので直接聞くことができます。

そこから、「本当にこの人が伝えたいことはなんだろう」「このメッセージを受けた人にどう思ってもらいたいんだろう」とひたすら考えていきました。

でも、一番の難しさは「受け取る側がどう感じるだろうか」「伝える側の思いがきちんと伝わるだろうか」というところでした。

「ツバキ文具店」で、鳩子はどんな手紙を書いたらいいか考えつつも、日常の暮らしを淡々と過ごす様子が書かれていました。季節ごとに移ろう街並みや出来事、ご近所の人たちとの関わりが丁寧に書いてあって、そのシーンの中に自分も一緒にいるかのような感覚になるほど、鮮やかです。
そんな日常の、ふとした瞬間に鳩子は、手紙のヒントになることに出会い、手紙を書いていきます。

人の気持ちを汲み取って、伝わる文章にするということは、テクニックではなくて、実際の人との関わりや風景の中から見つけたひらめきに気付けるかどうかが、大切なのかもしれないと感じました。感覚を研ぎ澄ますということは、大切なんだと思います。

それにしても、ツバキ文具店という本。
出てくるお料理の様子も、本当においしそうに書かれていて、「あー、鎌倉に行ったらこのお店、あるのかしら。行きたいーっ!」と思う場面も多かったですよ。

そうそう。
鳩子は、手紙を書くのにも、紙・ペン・筆・インク・墨など丁寧に考えていきます。その中で「ガラスペン」を使って書く場面があって、とても興味を持ちました。
そんなとき、あるイベントでガラスペンでのワークショップをしている方に出会い、ガラスペンのことを少しだけ教えていただきました。

ますますガラスペンが欲しくなっちゃった…。
字は恐ろしく下手くそなんですけど、なんとなくガラスペンを持てば、美しい文字が書けるんじゃないかと…淡い期待を持っています。

いろんな手紙の代筆依頼があって、それを手紙にしていく中で鳩子。最後に鳩子は、大切な人へ手紙を書くのですが、これもいろんな依頼に応える中で、今まで見えなかったものに気付けたからなのかなぁ、と。

ぐっと胸が熱くなったステキな一冊でした。

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できるだけいろんな方のお役に立てる企画をと考えています。

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