2015-05-12

「その人らしい生活のために」-看護師という仕事 vol.6

癌に特化した専門病院の看護師・小夜さん。
与えられた場所で自然と「自分にできることは何か」を考えて行動しているのだと、彼女の話を聞いて改めて感じます。
始めから高い目標を掲げるというよりも、今いる場所で「なにができるか」を考えていくタイプのようです。
けれど、その中で「あれ?これでいいのか?」と小さな気付きに出会ったときには、思いきった転換を選択する勇気も持っているのかもしれません。

 小夜さんの今までの話は
【「その人らしい生活のために」-看護師という仕事 vol.1
その人らしい生活のために-看護師と言う仕事vol.2
その人らしい生活のために-看護師の仕事vol.3
その人らしい生活のために-看護師の仕事vol.4
その人らしい生活のために-看護師と言う仕事vol.5

の記事をご覧ください。

私が看護師を続ける意味

取材の時間も終わりに近づいたころ、
「改めてしゃべると、私って、この仕事好きだったんだなぁって思いますね」と小夜さんは振り返って言いました。

ふとしたきっかけで入学した看護学校を卒業してから、20数年。
深く考えずに進路を決め、途中では自身も病気を患うなどしましたが、今も元気に看護師を続けています。

カルテを持つ看護師

「この仕事でよかったのかもしれない」と振り返る小夜さん。「めったにはないことだけれど」と前置きして、こんな話をしてくれました。

 小夜さんはリンパ浮腫の患者に、自分の病気のことを話すことがあるそうです。それは、リンパ浮腫による不自由さ、注意しなければいけないことの大変さに、患者がくじけてしまいそうな時。

投げやりになったりする患者に
「私も同じなんですよ」と言うのだそうです。
「私も不自由だけど、自分の体を守れるのは自分しかいないんですよ。自分でちゃんと守って下さいね」

そう思わず言ってしまうとか。これはなんの企みもなく、本当に「思わず口に出た」という感じなんだそうですが、患者の表情は一変するのだそうです。不自由さという点では、それを身をもって体験している人からの言葉が、患者に響くのでしょうか。

「誰にでも言うわけではないし、言おうと思って言ってるわけでもないんです。でも、不安になってる人に、『大丈夫よ。私も今、こんなに元気になって働いてるよ』って言う時があります」と小夜さん。
後になって患者から
「あの時、あぁ、こんなに元気になれるんだって思えたんです」と言われることもあり、
「別にそんなつもりで言ったわけじゃないけど、その人にとってはメッセージとして受け取ってもらえたのかなって思う」と言います。

「これって、もしかして、私が病気になった意味なのかなぁ」
とつぶやいた一言が印象的でした。

医療に携わる現場で、看護師としてすべき大切なことのひとつに、患者が深く考えて決めたことを支援することがあると考える小夜さん。

「AとBが選べる時、患者さんが、よく考えた末にAを選択したなら、それを後悔しないように支援したい。患者さんが人生の主役であって、私たちはわき役。患者さんが行こうとする方向に、一緒に寄り添っていきたいって思います」

与えられた「仕事」を着実にこなしながらも「私がしたい看護」という土台の上に立ち、どうしたらいいだろうと常に考えて行動している姿は、「与えられ場所でどう動くかを考えること」の大切さを職業や立場を超えて教えてくれているように感じました。 <了>

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